要注目の恋愛漫画「恋は雨上がりのように(眉月じゅん)」を紹介したいと思います。
本作は、主人公の女子高生 橘あきらとバイト先の店長による恋愛漫画。遥か年上の男性に想いを寄せる女子高生の心の動きと想いを寄せられた店長の心のゆれが見所です。
作者の眉月じゅんさんを、僕はこの作品ではじめて知りましたが、画の上手さはもちろん、整理されたコマ割りやコントロールされた台詞の量と入れ方を見て、一気にファンになりました。
特にすごい、と思っているのは、人物の心のゆれ、心情の変化を伝える描写の上手さです。リズム良く展開させる、その手腕は、もう、お見事というほかありません。
前書きの時点ですでに長くなってしまいましたが、詳細については本編で紹介していきたいと思います。
本作品の見所
- 出版社:小学館
- 掲載誌:ビッグコミックス
- 巻数:既刊5巻
少女17歳。片想い相手は冴えないおじさん
橘あきら。17歳。高校2年生。
感情表現が少ないクールな彼女が、胸に秘めし恋。
その相手はバイト先のファミレス店長。ちょっと寝ぐせがついてて、
たまにチャックが開いてて、
後頭部には10円ハゲのある
そんな冴えないおじさん。海辺の街を舞台に
青春の交差点で立ち止まったままの彼女と
人生の折り返し地点にさしかかった彼が織りなす
小さな恋のものがたり。(amazon.co.jpより引用)
引用させていただいたあらすじですが、結構これが曲者でして、読み進めていくと、違和感を覚えるかと思います。特に店長についての書き方。表紙の見目麗しい主人公がどんなに冴えないおじさんと恋に落ちるのか、と思わせる書き方なのですが、
読み進めてみると、店長の近藤は、確かに10円ハゲも出来ているし、たまにチャックも空いてはいるが、そこまで冴えないわけではない。
明らかなミスリードだ。
冴えないわけではない、と言ったが、女子高生のあきらとは、ビジュアル面でも年齢においても、不釣り合いな人物であることに違いはない。大人の魅力を感じさせるような場面もないので、やはり周囲の登場人物からすると冴えないおじさんと形容される存在なのだ。
この点を気にしてみると、すごく面白い。
恋する少女の視点を借りて、店長を眺めてみると、なんとなくかわいく見えてくるのに、フラットな視点で見ると、そうではないというギャップ。まさにこれぞ恋の力。
読者は、話が進むにつれて、あきらの視点に慣れてくる。したがって、店長の良いところがどんどん見えてくる。。恋愛の起伏を楽しむことができる。
この描き方がとても素晴らしいのです。
1〜5巻の感想まとめ
1巻から最新刊である5巻までの感想と見所についてまとめました。
恋は雨上がりのように 1巻
女子高生あきらから見える店長と、店長から見える女子高生あきらの対比が面白い。視点の違いは、現時点における好意の有無や、その大小からくるもので、どこを見ているのか、どのように捉えているのか、をはっきり提示しているところが潔いです。
巻が進むごとに、コマの使い方も、台詞の置き方も洗練されていくので、1巻を読み返すと、描き方がまだ定着していないのかなと思わされます。あれだけしっくりくるつなぎ方で読まされていると、ちょっとしたコマの切り方や間の取り方に違和感を感じてしまう。なんとも贅沢な悩みではないでしょうか。
あくまでも読み返すと気になる程度なので、初見なら、まったく問題ないと思います。作者の成長を良い意味で感じられる、という別の楽しみ方もあるかもしれません。
1巻の中で、僕が好きな場面は、ファミレスであきらと店長がペディキュアのやり取りをしているところ(第6話)です。
クールビューティー然とした、あきらも素敵ですが、年若い女子高生としての表情や言葉がすっと出てきたことで、ようやく、このあきらというキャラクターを身近に感じることができた回だったと思います。
さりげなく巻末話への伏線もきっちり張ってあって、あっぱれ、というほかありません。
恋は雨上がりのように 2巻
2巻はすごい。すべてのエピソードが面白い。1巻を読んだ後、すぐに2巻を読むと、面をくらうかもしれないですね。余分なコマが削ぎ落とされて、必要な情報しかそこにないから、展開がとてもスムーズで速く感じられます。
2巻の好きな場面を、あえてあげるならば、巻末話の引きでしょうか。コマの使い方も効果的で、次の話が読みたくてたまらなくなる、絶妙の引きだと思います。
店長と息子のやり取りとあきらの顔を交互に見せておいて、あえて、最後の3コマでは、あきらの顔を描かないところに、作者と編集者の遊び心を感じます。
恋は雨上がりのように 3巻
非常にスピード感のあった2巻に比べて、3巻は情緒的な巻ではないでしょうか。お互いのことを深く知っていく過程は、楽しいことばかりではなくて、ぶつかったり、傷つけてしまったりすることもあるけれど、それでも前に進むことの尊さと怖さがゆったりとした流れの中で描かれているように思います。
この巻の見所は、店長がはじめて見せた、心の暗い部分であり、あきらへの拒絶の意思表示でしょう。「君が俺の何を知っているの」という言葉は、これまでの店長の調子からすると、中々想像できるものではないですよね。
もし心が折れてしまったとしても、いたしかたないように思いますが、ここで引かない、傷つくことから逃げない、という姿勢にこそ、若さを感じます。
3巻の引きも2巻に負けず劣らず抜群に良いです。不意打ちのような終わり方がなんですが、そこがいい。激しい雨と風の中、ついに玄関のドアが閉まる。2人の姿は見えない。
この後、2人がどうなるのか。そこに想像の余地が残されているのが素晴らしい。
恋は雨上がりのように 4巻
「この感情を、恋と呼ぶにはあまりに軽薄だ」
この台詞は、不安と安堵から頬を濡らすあきらを、どうにか救ってあげたい、という店長の心情から汲み取られたものであるが、非常に複雑な感情を内包していることが一言で伝わる、良い台詞だと思います。
自分の気持ちに素直になりたくても、なれない大人になってしまった者の言葉であり、まさにそれこそがこの作品の肝の部分であるように思います。
4巻まで見てきて、店長は徐々に若い感性を取り戻しつつあるし、魅力的な味わい深い人物に変化してきていることに驚かされます。
店長とあきらの交流は、今後2人にどのような変化を与えるのでしょう。本作品は、恋愛物語ですが、登場人物たちがどのように成長していくのか、という点も大変気になりますね。
4巻といえば、第25話でしょう。2巻の引きの答え合わせができる、というのと、店長の心情面の変化も見逃せません。それは冒頭の台詞にもつながってきます。
恋は雨上がりのように 5巻
【2016年6月20日更新】
5巻の感想と見所についてはこちらをどうぞ。
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まとめ
この『恋は雨上がりのように』は、このマンガがすごい2016、オトコ編第4位にもランクインしていたこともあり、非常に注目度の高い作品です。
そういった看板がなくても、きっと見つけてもらえた作品だと思いますが、もっと、もっと、たくさんの人に読んで欲しい、という願いを込めて各巻の感想と見所についてまとめてみました。
5巻からはもう分厚めに紹介したかったので、記事を分割させていただいてます。もしかすると、その他の巻も分けさせてもらうかも。
それではまた次回お会いしましょう。